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情報メディア創成学類の大学院推薦率(21生)

大学院進学をにらみつつ、情報メディア創成学類を志望している高校生や高専生、高校と高専のどちらに進学しようか悩んでいる中学生のために書いておこうと思う。 なお、本記事の情報は21生(令和3年度入学)のものになるので、将来は変動しているかもしれな…

『意味がわかるAI入門』批判

意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦 (筑摩選書 267)作者:次田 瞬筑摩書房Amazon 2023年9月出版の比較的新しい書籍である. 現代言語哲学で主力である真理条件意味論を取り上げて,それを分布意味論(意味の使用説の一種)と比較して…

永井哲学と入不二哲学の関係は π/2 なのか

はじめに X上でなぜかしばしば直接的・間接的に絡んでくださる谷口一平氏が、次のようなポストを投稿していた。 永井哲学と入不二哲学の基本的な関係は、 θ=π/2つまり90度の回転である。すなわちそこでは、タテのもの(超越論的構成)はヨコ(横方向への展…

情報学研究データリポジトリのニコニコデータセットのダウンロードに関する備忘録

www.nii.ac.jp 国立情報学研究所の情報学研究データリポジトリにはニコニコデータセットというものがある。 そのダウンロードページには 0001.jsonl 、0002.jsonl…… 0999.json といったようにJSONLファイルが連番で掲載されている。 一つひとつの動画に対応…

〈音楽素(museme)〉と〈旋律素(meleme)〉

museme ポピュラー音楽学者 Philip Tagg により提唱された概念であり、museme = music + phoneme という造語で、音楽における書記素(phoneme)を表す。 『[クリティカル・ワード]ポピュラー音楽』の「楽曲」節(川本聡胤著)にて、音楽の間テクスト性を説…

Lucien Dällenbach «Intertexte et autotexte»

以下は Lucien Dällenbach «Intertexte et autotexte» (Poetique: Revue de Theorie et d'Analyse Litteraires27 (27) p.282)の無断複製。 JSTOR に上がっていなかったので、勝手に載せることにした。 本論文は間テクスト性(intertextualité)を3つに分類…

筑波大学のシラバス(KdB)のGPTを作成した

筑波大学のシラバス(KdB)の科目を検索したり、科目の詳しい情報を得ることができる GPT『KdB』を作成・公開した。 チャット例はこの通り。 すごい。 情報検索(IR)のあり方が変化しつつあることを体感した。 本当は科目の評価情報も追加したく、A+つくば …

大学に入学する人に伝えたい言葉

テクノコードの誕生 ――コミュニケーション学序説 (ちくま学芸文庫 フ-52-1)作者:ヴィレム・フルッサー筑摩書房Amazon 樹木型言説のどの枝も、たえず新たな情報を生み出し、それが古い情報を〈追い越し〉ているのであって、情報が情報の上に〈溢れ出る〉よう…

筑波大学統一認証システムに自動的にログインするためのユーザスクリプトを作成した

筑波大学の情報系学生が取り組むトピックのひとつにブラウザ拡張機能がある。 そのなかでも統一認証システムの自動ログインは重要な問題であった(と思う)。 ここで詳しい歴史を述べることは控えるが、種々の開発者が自動ログイン機能を実装・公開し、大学…

『東大ボカロ論』はいかに文化階級闘争を仕掛けているか

著者によって本書初頭に示されるように、鮎川ぱて『東大ボカロ論』は文化階級闘争を強く意識している。 本項では、鮎川が本書を通して文化階級闘争をどのように仕掛けているかを分析する。 東京大学「ボーカロイド音楽論」講義作者:鮎川 ぱて文藝春秋Amazon …

『[クリティカル・ワード]ポピュラー音楽』のキーワード集

クリティカル・ワード ポピュラー音楽 〈聴く〉を広げる・更新する作者:永冨真梨,忠聡太,日高良祐,有國明弘,石川ルジラット,大嶌徹,大尾侑子,尾鼻崇,大和田俊之,葛西周,加藤賢,上岡磨奈,川本聡胤,金悠進,源河亨,篠田ミル,ジョンソン・エイドリエン・レネー,…

新たな知識人

ディスタンクシオン〈普及版〉II 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)作者:ピエール・ブルデュー藤原書店Amazon 学問的知識を駆使するなどして、正統文化以前の文化に情熱を注ぐ小市民を、ピエール・ブルデューは《新たな知識人》と呼んだらし…

音MAD/YTPMV研究に楽理は必要か?

ポピュラー音楽の分野でも、P. Tagg らによって楽理の不必要性は喧伝されてきたらしい。 というのも、社会学の上に建設されたポピュラー音楽は、その社会学性によって外在主義的立場を取るからである。 www.academia.edu 前掲論文の著者である川本によれば、…

二次創作界のファンダム理論の難しさ?

二次創作界のファンダム理論の難しさというより、R. Barthes の〈作者の死〉概念であれ、John Fiske の〈解釈共同体〉概念であれ、Stuart Hall の〈能動的な脱コード化〉概念であれ、Michel de Certeau の〈テクスト密猟〉 概念であれ、Henry Jenkins の〈参…

なぜ文化研究に哲学が必要か

同人誌『アレ vol.1』の「アニメ批評の中心地より」の節にて、シノハラさんが「批評には抽象化=哲学的な思考が必要だ」と述べていた気がする。いや、必要とまでは言ってはいないかもしれない。 しかしどちらにせよ、このことは文化研究にとって一番必要なこ…

note.com を退会したいけどフォロイーの記事を購読しつづけたいあなたに『note2rss』!

フォロイーらの記事の購読を継続しつつ http://note.com から退会するために、RSS フィードコレクションファイル(OPMLファイル)を生成する mix プロジェクトを作った。 github.com note.com とは次の UGC プラットフォームである。 note.com 以下は、レポ…

Binance に日本円を入金する際には振込人名義の変更を忘れないようにしよう

注意 この記事は、令和6(2024)年2月2日時点の日本国内のとあるBinanceユーザの例に関するものです。 まとめ Binance に日本円を入金する際には振込人名義の変更を忘れないようにしよう。 とはいえ、この記事を読んでいる人のほとんどは振込人名義の変更を…

音MADのバーチャートレース

数ヶ月前に作った音MADのタグに関するバーチャートレースをVimeoに上げた。 2007年4月から2023年7月までのニコニコ動画における音MADのタグの棒グラフレース。 制作には以下のPythonライブラリを使用した。 github.com しかし、音MADの歴史は血塗られている…

〈映像素〉と Nelson Goodman の稠密性概念の対立

記号論の文脈で、〈映像素(videme)〉という概念がある。 Umberto Eco が用いていた映画記号論上の概念で、たとえば映像に映っている演者の手中にある烟草とか、人の顔とか、そういったものを指す語である。 つまり、映画という媒体における記号素となる概…

MML と音色の自由

音色の自由――これこそが具体音楽の思想的基盤なのである。この視座から MML(Music Macro Language)のアーキテクチャ的暴力性を指摘することは容易いであろう。MML の音色は常に工学者=アーキテクチャの設計者の管理の基にある。MML は432種を超える音色を…

メタデータ API 緩衝層を作ったことで Go の非関数型言語性を知った

動機 私が利用している国立国会図書館サーチのメタデータは、国立国会図書館ダブリンコアメタデータ記述(DC-NDL)に準拠している。 今回は書籍のページ数の情報が必要になったため、DC-NDL の該当するフィールドを調べてみることにした。 ndlsearch.ndl.go.…

阿部共実『大好きが虫はタダシくんの』

言わずと知れた名作である。 感想文は幾度となく数多の無名の著者によって書かれたであろうが、同じく無名である私も残しておきたいと思う。 『潮が舞い子が舞い』が陽の青春群像劇であるならば、本作や『空が灰色だから』、『ちーちゃんはちょっと足りない…

高校物理の力学と正射影作用素

高校物理の力学分野で頻出する斜面平行方向とか斜面垂直方向とかが、線形代数の正射影作用素の一部だったことにいまさら気付いた。 正射影作用素は次のように定義される。 つまり、 次元に射影を拡張したものである。 mathtod.online 高校では 2 次元空間し…

放送大学の教科書『自然言語処理』の改訂版と三訂版の比較

はじめに 本項では、放送大学教育振興会出版の黒橋禎夫『自然言語処理』の改訂版(2019年)と三訂版(2023年)を比較する。 自然言語処理の主流であった古典的手法が、ニューラルネットワーク的手法に圧倒されていくさまを見ることができる。 前著では比較的…

ブルーバックス『プログラミング20言語習得法』のサンプルコードをまとめた

講談社ブルーバックスの『プログラミング20言語習得法』(小林健一郎 2014年)に掲載されているサンプルコードをまとめたレポジトリを GitHub で公開した。 プログラミング20言語習得法 (ブルーバックス)作者:小林健一郎講談社Amazon github.com 今から10…

同時実況シリーズ『メディア・コンテンツ論』

ゲーム実況がありうるなら書籍実況もありうるだろう。 はじめに 2016年6月に上梓された、シリーズ「メディアの未来」第6番の岡本 健・遠藤 英樹 編『メディア・コンテンツ論』を同時実況する。 15本の論考が載せられており、それぞれ多様な話題を扱っている…

『美文書作成入門』よりスリムな『LaTeX超入門』を

はじめに ブルーバックスレーベルの 入門書。 2020年に出版され、また奥村晴彦の『[改訂第7版]2εー美文書作成入門』を参考文献に引いているため単なる競合書籍という訳ではない。 に入門する方には新書である本書を『美文書作成入門』より薦めることがで…

笹原宏之『方言漢字』で日本紀行しよう

はじめに 国語学者の笹原宏之と共に全国の方言漢字を探す随筆。 本書は、2013年に角川書店より刊行された『方言漢字』(角川選書)に加筆し、文庫化したものである。 2020年7月に刊行された。 三省堂書店のウェブサイトに300本ほど連載された『漢字の現在』…

田中久美子『記号と再帰』こそ真の情報記号論だ!

はじめに Semiotics 誌への寄稿論文の編集である田中久美子『記号と再帰』(東京大学出版会)を読んだ。 応用記号論という伝統を墨守した真面目な論である。 石田英敬の情報記号論に失望した人々には受けると思う(計算機科学者ではなく仏文学者がなぜ情報記…

『機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで』と『ベイズ推定入門 モデル選択からベイズ的最適化まで』の語彙

以前オーム社の『機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで』と『ベイズ推定入門 モデル選択からベイズ的最適化まで』を読み、そのときにそれらの書籍に生起する語彙をまとめていた。 本項にはそれを並べる。 なお、語がなにを意味していたかをほと…